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東京地方裁判所 平成12年(ワ)1205号 判決

原告

佐野等

右訴訟代理人弁護士

神田高

被告

忠建設株式会社

右代表者代表取締役

宮川忠福

右訴訟代理人弁護士

宇都宮正治

主文

一  被告は、原告に対し、原告が第二項にかかる抵当権設定手続を行ったことを条件として、五七四九万一二七八円及び内四八五五万三一九四円に対する平成一二年一一月七日から支払済まで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  被告は、原告に対し、別紙物件目録一記載の土地及び同二記載の建物につき、別紙のとおり平成一二年一一月六日民法第四六一条第一項に基づく債権を原因とする抵当権設定登記手続をせよ。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、五七四九万一二七八円及び内四八五五万三一九四円に対する平成一二年一一月七日から支払済まで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

2  主文第二項に同じ。

3  主文第四項に同じ。

4  1につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  訴外神田信用金庫(以下「訴外金庫」という。)は、被告に対し、平成九年五月二七日、訴外全国信用金庫連合会(以下「訴外連合会」という)の代理貸し付けにより、四六〇〇万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件貸付契約一」という。)。

(一) 弁済期限 平成一八年五月二〇日

(二) 弁済方法 平成九年七月二〇日を第一回として、以後毎月二〇日に五〇万七五一八円を支払い、最終回に残額を完済する。

(三) 利息 年3.8パーセント(年三六五日の日割計算)ただし、訴外連合会の長期貸出最優遇金利を基準金利とする変動金利とする。

(四) 利息支払方法 平成九年六月二〇日を第一回とし、以後毎月二〇日に前一か月分を後払いする。

(五) 損害金 年一四パーセント(年三六五日の日割計算)

2  原告は、被告から、平成九年四月末ころ、保証の委託を受け、訴外金庫との間で、平成九年五月二七日、前項の被告の訴外金庫に対する貸金債務を連帯保証する旨の合意をした。

3  訴外金庫は、被告に対し、平成九年九月二六日、一五〇〇万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件貸付契約二」という。)。

(一) 弁済期限 平成一四年九月二五日

(二) 弁済方法 平成九年一〇月二五日を第一回として、以後毎月二五日に二五万円を支払い、最終回に残額を完済する。

(三) 利息 年5.63パーセント(年三六五日の日割計算)ただし、金庫長期プライムレートを基準金利とする変動金利とする。

(四) 利息支払方法 平成九年九月二六日を第一回とし、以後毎月二五日に翌月二五日までの前払いする。

(五) 損害金 年18.25パーセント(年三六五日の日割計算)

4  原告は、被告から、平成九年九月二四日ころ、保証の委託を受け、訴外金庫との間で、平成九年九月二六日、前項の被告の訴外金庫に対する貸金債務を連帯保証する旨の合意をした。

5  被告は、本件貸付契約一及び二に基づく債務について平成一一年五月分以降の返済を怠った。

6  訴外金庫は、訴外連合会に対し。平成一一年一一月一二日、本件貸付契約一に基づく債務の残元金、利息及び遅延損害金の合計三八三〇万三一九四円について保証履行し、連帯保証人である原告に対し、平成一一年一二月一七日、本件貸付契約二に基づく債務の残元金一〇二五万円及び訴外金庫が平成一一年一一月一二日に保証履行した三八三〇万三一九四円の合計四八五五万三一九四円を平成一一年一二月二四日までに支払うよう請求した。

7  訴外金庫は、株式会社整理回収機構(以下「整理回収機構」という。)に対し、平成一二月六月五日、本件貸付契約一及び二に基づく債権を譲渡した。

8  被告が、整理回収機構に対して有する本件貸付契約一及び二に基づく債務は、平成一二年一一月六日現在において、五七四九万一二七八円(本件貸付契約一に基づく債務として、残元金三八三〇万三一九四円、遅延損害金六九一万三七二六円、本件貸付契約二に基づく債務として、残元金一〇二五万円、未収利息二八万八七三三円、遅延損害金一七三万五六二五円)であり、原告は整理回収機構に対し、右と同額の連帯保証債務を有する。

9  原告は、民法第四六一条第一項に基づく担保の提供として、被告のために、原告の所有する別紙物件目録一記載の土地及び同二記載の建物(以下「本件土地建物」という。)に抵当権を設定する。

10  よって、原告は、被告に対し、受託保証による事前求償権に基づき、五七四九万一二七八円及び内四八五五万三一九四円に対する弁済期の経過した後である平成一二年一一月七日から支払済まで年一四パーセントの割合による遅延損害金の支払並びに本件土地建物につき、平成一二年一一月六日民法第四六一条第一項に基づく債権を原因とする抵当権設定登記手続を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因事実1ないし7は、認める。

2  同8は、否認する

3  同9は、争う。本件土地建物は、民法第四六一条第一項の担保としては不十分である。

理由

一  請求原因1ないし7の事実については、当事者間に争いがなく、調査嘱託の結果によれば、同8の事実が認められる。

そうすると、原告の事前求償権が認められることになるところ、原告が民法第四六一条第一項に定める担保提供を申し出ている本件では、二1で述べるように主債務者である被告が事実上二重弁済をしいられるような結果を避けるため、原告が担保提供をしたことを条件として、事前求償にかかる請求が認められることになる。

二  請求原因9(本件土地建物の担保適格性)について

1  担保価値について

民法第四六一条第一項は、保証人の事前求償に際し、主債務者に、保証人に対する担保提供請求権を認めている。その趣旨は、主債務者が保証人の事前求償に応じたにもかかわらず、保証人がこれを費消して債権者に弁済を行わなかった場合には、主債務者はなお債権者に対し主債務の履行義務を負うことになるため、事実上の二重弁済をしいられるような結果を招くことがあり得るが、このような事態を招かないように主債務者を保護することにある。そのために、事前求償権を行使する保証人が担保を提供することは、保証人にとっては、保証債務の履行の心理強制となり、主債務者にとっては、保証債務が履行されなかったときの損害填補の担保となるのである。そうすると、同条項における「担保」としては、保証人にとって、保証債務履行の心理強制となり、かつ、主債務者が二重弁済をしいられた場合に生ずる損害を担保できるものであることが必要であるというべきである。したがって、本件においては、本件貸付契約一及び二に基づく債務の価額を担保できるものでなければならないのである。

ところで、甲七号証、甲八号証によれば、本件土地建物は、金融機関である訴外金庫が、本件貸付契約一を締結するにあたり、極度額五〇〇〇万円として第一順位の根抵当権を設定したことが認められる。そして、右が金融機関が設定した担保であることからすれば、右根抵当権設定の当時、少なくとも極度額以上の価値を有していたものであることが推認され、根抵当権の設定は平成九年四月にされているから、その後の価値の若干の下落を織り込んでもなお、本件土地建物は、それ自体の価値として、本件貸付契約一及び二に基づく債務の価額を担保できるものと認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

このことに加え、前記のように、本件土地建物には、既に第一順位に極度額を五〇〇〇万円とする共同根抵当権が設定されているため、本件土地建物の担保価値としては、本件土地建物の評価額から右極度額を差し引いた残額となるのが原則である。しかし、本件においては、第一順位の共同根抵当権の被担保債権が、本件貸付契約一及び二の主たる債権であって、その余の担保権は何ら設定されていないというのであるから、仮に主債務者である被告が事前求償に応じた後、保証人である原告が債権者に弁済する前に、被告が債権者の請求を受けたとしても、被告としては、第二順位の共同抵当権を実行すれば、まず第一順位の共同根抵当権者が配当を受けることとなり、これにより第一順位の根抵当権の被担保債権である主債務が消滅すれば、被告は、弁済を免れることができることになる。とすれば、本件土地建物が主債務を担保しうるものであれば、主債務者に二重弁済の危険はないことになる。

そして、本件土地建物の価値は前記のとおりであるから、本件土地建物は、主債務者が二重弁済をしいられる場合に生ずる損害、すなわち本件貸付契約一及び二に基づく債務の価額を担保できるものと認められる。

2  二重弁済の可能性について

被告は、物的担保においては換価手続に若干の時間を要することから、主債務者の事実上の二重弁済の可能性を指摘して、物的担保の担保不適格性を主張するので、この点について検討する。

民法第四六一条第一項は、主債務者の二重弁済の危険を制度として防止したものであり、物的担保の提供も二重弁済の危険を防止しうるものであることは明らかであるから、担保としての適格性がないということはできず、被告の主張には理由がない。

3  そうすると、本件土地建物は、本件において、民法四六一条第一項の「担保」たりうる担保価値を有するものであり、原告は、これに別紙のとおり平成一二年一一月六日民法第四六一条第一項に基づく債権を原因とする抵当権設定登記手続を行ったときは、本件事前求償にかかる請求が認められる。

三  よって、原告の請求は担保提供を条件とする限度で理由があるから、これを認容し、その余は棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六四条ただし書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官・加藤新太郎)

(別紙)物件目録

一 所在 新宿区弁天町

地番 <略>

地目 宅地

地積 132.26平方メートル

二 所在 新宿区弁天町<番地略>

家屋番号 <番地略>

種類 居宅 共同住宅

構造 鉄骨造スレート葺二階建

床面積 一階 69.81平方メートル

二階 68.19平方メートル

(別紙)

順位 二番

登記の目的 抵当権設定

登記の原因 民法第四六一条第一項に基づく債権

債権額 五七四九万一二七八円

損害金 年一四パーセント(ただし、債権額の内四八五五万三一九四円に対する平成一二年一一月七日から支払済みまで)

債務者 新宿区弁天町<番地略>佐野等

抵当権者 新宿区早稲田南町<番地略>

忠建設株式会社

共同担保

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